脱毛でやけどした!?対処法から予防法までお教えします
近年、若い女性を中心に人気を集める光脱毛や医療レーザー脱毛。ほとんど痛みを感じることなく手軽に処理できるとあって、これまでチャレンジしたことのない人の中にも、脱毛を始める人が増えてきています。
しかし、そんな人気の裏側で、光脱毛や医療レーザー脱毛によるやけどの被害も増加しています。
しかも、サロンやクリニックだけでなく、家庭用脱毛機でも使い方を誤るとやけどをする恐れがあるため要注意です。
今回は、「なぜ脱毛でやけどをするのか?」「脱毛のやけどは治るのか?」「防ぐ方法はあるのか?」について、対処法や予防法を詳しくご紹介します。
やけどってどういう状態?
一般的にいう「やけど」とは、どのような状態を指すのでしょうか。通常のやけどと、脱毛によるやけど、それぞれの特徴をご紹介します。
一般的なやけどの特徴とは?
熱いお湯や鍋などに触れたあとで、皮膚が痛くなったり、水ぶくれになったりしたことは、誰しも一度は経験のあるものでしょう。
やけどとは、上記のような「熱」や「化学薬品」などに触れることで、皮膚や体の組織などが破壊された状態をいいます。
やけどには「温熱やけど」「電気やけど」「科学やけど」「放射線やけど」の4つの種類があり、一般的なやけどのほとんどは「温熱やけど」によるものとされています。
やけどは深さとその面積で症状の重症度と治療方法が決まります。深度Ⅱ度以上のやけどを大人の場合全身の20%以上、子供の場合10%以上負うと合併症の危険が高まるため、早急な手当てが必要となります。
また、やけどの厄介な点は、治ったあとの傷跡を消すのが難しいというところです。特に、体の目立つ部分に広範囲の傷跡が残ると、外見上大きな問題となるケースも少なくありません。
自分では大したやけどではないと思っても、少しでも異常を感じる場合は医療機関を受診するようにしましょう。
脱毛によるやけどの特徴とは?
脱毛サロンやクリニック、家庭用脱毛機では、特殊な光を皮膚に照射し、毛包や毛根に熱のダメージを与えて脱毛を行います。
サロンや家庭用脱毛機で使われる光脱毛では約70度、クリニックで使われる医療レーザー脱毛では約200度の熱エネルギーが照射されます。
そして、脱毛処理にとっては必要不可欠なこの熱が原因で、やけどを負ってしまうことがあるのです。
特に、日焼けをした肌や色素沈着のある肌に光を照射すると、肌のメラニン色素が熱に強く反応しすぎてやけどを引き起こすリスクがあります。
また、乾燥肌や敏感肌など、デリケートな状態の肌も、外部からの刺激にダメージを受けやすくなっているため注意が必要です。
脱毛によるやけどを避けるためには、上記に挙げたような危険因子がないかを、まずは自分で確認しておくことが大切です。
脱毛によるやけど、どう判別したらいいの?
脱毛処理のあとに痛みや赤みといった症状が現れても、それがやけどによるものなのか、脱毛の刺激による一時的な反応なのか、素人が判断するのは難しいケースも少なくありません。
自分では判断がつかないときは、そのまま放置するのではなく、早めに医療機関を受診することが大切です。
以下に、やけどの場合によく見られる症状をまとめましたので、参考にしてみてください。
肌の状態 | やけどかどうかの目安 | 対処法の目安 |
---|---|---|
肌に赤みが出る ビリビリとした痛みがある |
2~3日経過しても痛みが治まらない場合は軽度のやけどの可能性が高い | まずは肌を冷やし、様子を見る 日焼け用のローションなどを塗布してみる |
ミミズ腫れやじんましんのような斑点ができている | 脱毛処理後に腫れ始め、かゆみも伴う場合、軽度のやけどの可能性がある 光へのアレルギーを持つ人は、光照射によるアレルギー反応で腫れた可能性もある |
肌状態の写真などを撮影し、サロンやクリニックの担当者に連絡する 対処を仰ぐ |
水ぶくれができている | 脱毛処理後に水ぶくれができ、さらに痛みを伴う場合、中度のやけどである可能性が高い | サロンやクリニックの担当者にすぐ連絡 皮膚科などを受診する |
光を照射した瞬間に「熱い」と感じたり、肌に異変が起きたりするケースだけでなく、余熱のようにじわじわと、時間をかけて肌に熱が浸透していき、やがてやけどに進展するケースもあります。
脱毛処理を受けた直後はなんともなくても、数日後に上記の表に挙げたような異変が現れた場合は、実はやけどを負っていたという可能性もあるためご注意ください。
やけどをしてしまった場合の対処法は?
やけどをしてしまった場合、一番大切なのはできるだけ早期に適切な治療を行い、症状を悪化させないことです。以下に適切な対処法・誤った対処法をそれぞれご紹介します。
適切な方法で冷却する
自分でもできるやけどの応急処置で、最も効果が確実なのが冷却です。
脱毛によるものに限らず、やけどを負った場合は、10度の冷水で10分から15分程度冷やすと良いとされています。
この際、患部に直接水をかけるのではなく、やけどを負った場所の周りに水を当てるようにして冷やしてください。患部は組織が傷ついて過敏な状態になっているため、直接的な刺激は出来る限り避けた方が賢明です。
流水で冷やせない状況・部位の場合はバケツや洗面器に水を張って冷やすと良いでしょう。水がぬるくなってしまうときは、途中で新しいものに取り換えると、よりしっかりと冷却することができます。
冷却をした後、しばらく様子を見ても痛みや熱が引かない場合はやけどの進行が止まっていない恐れがあるため、医療機関を受診するようにしましょう。
やってはいけない対処法
次に、やってはいけない対処法をご紹介します。
氷や保冷剤で直接冷やす
やけどを負うと、とにかく患部を冷やそうと氷や保冷剤を肌に直接押し当てる人がいますが、それは大きな間違いです。
氷や保冷剤といった極度に温度の低いものを長時間肌に触れさせていると、その部分の血流が悪くなり、凍傷を起こしてしまう恐れがあります。
やむを得ず氷や保冷剤を使う場合は、タオルやガーゼに包むなどして、肌を冷やし過ぎないように注意しましょう。
水ぶくれを潰す
やけどが表皮の奥にある真皮まで進んでしまうと、水ぶくれが出来る場合があります。つい気になって潰してしまうという人もいますが、水ぶくれは絶対に潰さないようにしましょう。
水ぶくれのなかにはリンパ液などが含まれており、傷ついた患部を保護する役割を担っています。そのため、水ぶくれをそのままにしておいた方が傷の治りも早く、ばい菌などへの感染も防ぐことができるのです。
やけどの跡が残ってしまったら…
やけどで怖いのは、傷跡が残ってしまうことです。キレイになるために脱毛をしたのに、逆にやけどの傷跡が残ってしまったのでは本末転倒ですよね。
やけど跡には大きく分けて、色素沈着によるものと、傷跡が盛り上がる皮膚の肥厚、皮膚がただれてしまうケロイドがあります。それぞれの予防法について以下に詳しくご紹介します。
色素沈着によるやけど跡を防ぐには
古い角質を除去する
色素沈着を起こしている部位の古い角質を除去することで、やけどの傷跡が残るのを予防する効果が期待できます。特殊な薬剤を肌に塗って角質を除去するケミカルピーリングなどが有効な方法です。
古い角質を取り除くことは、新しい肌の再生にもつながります。やけどによって傷ついた肌が生まれ変わることで、色素沈着を防いだり、薄くしたりする効果が期待できるのです。
ホワイトニングケアをする
ホワイトニングケアも色素沈着の予防には効果的です。特に、美白クリームを使ったケアは、自宅で気軽に行うことができるのでオススメです。
美白クリームには、シミなどの色素沈着を薄くする・日焼けした肌を白くする・透明感のある肌を作るなどの効果があります。中でも、シミを予防する効果のあるアルブチンやトラネキサム酸、シミを薄くする効果のあるエナジーシグナルAMP、そしてそのどちらの効果もあるビタミンC誘導体などが含まれている製品を選ぶようにすると良いでしょう。
ただし、肌の状態やクリームに配合されている成分によっては、逆に刺激となってしまうケースもあるため注意が必要です。肌に異常を感じる場合はすぐに使用を中止しましょう。
皮膚の肥厚やケロイドを防ぐには
皮膚の肥厚(肥厚性瘢痕)
皮膚の真皮にまで達するようなやけどを負った場合、傷跡が赤く盛り上がることがあります。
多くの場合は数カ月経つと赤みが治まり、白く平らな傷跡に落ち着いてきます。しかしなかには、赤く盛り上がった状態のまま傷跡が残ってしまうケースもあります。その状態を肥厚性瘢痕といいます。
肥厚性瘢痕を予防するためには、ステロイドやヘパリン類似物質が配合された外用薬を患部に塗布する・サポーターや包帯などで傷跡を持続的に圧迫する(最低でも半年は続ける)・感染を予防するなどの方法が有効です。
ケロイド
ケロイドとは、肥厚性瘢痕がいつまで経っても治らずに、逆にどんどん広がっていく症状を言います。
赤く盛り上がった傷跡がなかなか治癒せず、時間の経過と共に周囲に拡大していく場合はケロイドを疑ってみた方が良いでしょう。
ケロイドを予防するには、何よりも傷を化膿させないことが大切です。化膿した傷はケロイドになりやすいため、十分に注意しましょう。
また、ケロイドの治療方法としては、手術・放射線療法・ステロイド外用薬の使用・圧迫療法・リザベンの内服などが挙げられます。
やけどをしないために、気をつけること
やけどはさまざまなトラブルの原因となります。そこで、脱毛でやけどをしないために気をつけることをご紹介します。
クリニックでの注意点は?
クリニックで使用する医療レーザーは、脱毛サロンの光脱毛に比べてパワーが強いため、より高い効果が得られる反面、やけどを負うリスクも高くなります。
そのため、クリニックを選ぶ際は料金だけでなく、十分な知識と経験のある、信頼のおける施設を選ぶようにしましょう。また、万が一の場合に備えて、保証のあるクリニックを選ぶと安心です。
脱毛サロンでの注意点は?
脱毛サロンで行う光脱毛は、医療レーザーに比べてパワーが弱いため、やけどを負うリスクも低くなります。
しかし、肌の状態などによっては、光脱毛であってもやけどのリスクはゼロではありません。いざというときに困ることのないように、トラブルが発生した場合は速やかに医師の診察が受けられるような体制があるかを確認しておきましょう。
家庭用脱毛器での注意点は?
最近の家庭用脱毛機には、サロンと同じような光脱毛が行えるものも増えています。安全性に留意した設計にはなっていますが、光を照射する以上、やけどのリスクはあります。
日焼けをした肌や色素沈着のある部分には照射しない・処理時に塗布するジェルは指定のものを使う・アフターケアをしっかり行うなど、正しい使い方を厳守するようにしましょう。
また、海外製のものは肌色が日本人仕様ではない場合もあるため、必ず日本人仕様のものを選ぶようにしましょう。
サロンやクリニックへの対応はどうしたらいい?
やけどをした場合、医療費などの負担がかかることがあります。いざというときに揉めることのないように、契約書のトラブル条件項目や、医師にかかることのできる条件は事前に必ず確認しておきましょう。
やけどで通院せざるを得なくなった場合は「脱毛によるやけど」である証拠を準備しておけば、通院にかかった交通費や治療費をサロンやクリニックに請求することができます。
また、もう契約を解約したいというときは、サロンやクリニックの落ち度(契約不履行)による解約として、ペナルティなしの手続きを求めることも可能です。
慰謝料は請求できるのか?
やけどをした部位が、適切な治療を施したにも関わらず、キレイに治りきらずに傷跡が残ってしまった場合は「脱毛による後遺症」として慰謝料の請求が可能です。
過去の裁判例として、脱毛サロンでのやけどに対し、施術費用全額返還に加えて、慰謝料を含む百数十万円の損害賠償が認められた事例もあります。
後遺症による慰謝料請求には専門的な知識が必要となるため、まずは弁護士に相談するようにしてください。
弁護士に依頼した場合の費用は?
弁護士に依頼した場合にかかる費用は、大まかに分けると、着手金と成功報酬の2つになります。着手金は10万円~30万円が相場とされ、成功報酬は損害と認定された額の10%が一般的です。
損害額の算定や証拠集めに関しても、高度な専門知識や法律知識が必要です。裁判は大袈裟すぎるという場合は、弁護士から内容証明を送るなどの方法もあります。内容証明の作成と送付のみであれば、数万円で行うことが可能です。
すぐに弁護士に依頼するのではなく、まずは脱毛処理を受けたサロンやクリニックに相談し、それでも解決が難しい場合は法的な手続きを考えると良いでしょう。
おまけコラム・やけどと似た症状に光接触皮膚炎がある!
光を照射した後、皮膚に赤み・ヒリヒリとした痛み・発疹・かゆみなどの症状が現れた場合、やけどではなく、光へのアレルギー反応というケースもあります。
光接触皮膚炎と呼ばれる症状で、詳しい原因はまだ特定されていません。
光接触皮膚炎の場合、脱毛を継続することができない場合もあるため、該当する症状が見られる場合は、サロンやクリニックに相談をする、もしくは専門医を受診するようにしましょう。
この記事のまとめ
光脱毛や医療レーザー脱毛は、高い効果を得られる反面、光を照射することによるやけどのリスクもあります。
やけどにはさまざまな症状があり、なかには一時的な炎症やアレルギー反応との判別が難しいものも存在します。
やけどを負っているのに「大したことはない」と放置をしたり、誤った対処をしたりすると、症状が悪化して、肥厚性瘢痕やケロイドといった状態になる・傷跡が残るなどの恐れもあります。
脱毛が原因でやけどを負うこともあるという点をしっかりと頭に入れておくことが大切です。
また、いざという時に備えて、正しい対処方法や保証の請求の仕方なども確認しておきましょう。